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「深月がさ、逆の立場だったらどう思う? 好きな人が勝手な嫉妬心だけで傷付けられてんの黙って見過ごすか?」
(もし、将継さんが傷付けられていたら、僕は黙って見過ごすことなんて出来ない……)
そう思ってフルフルと頭を横に振ると、将継さんは琥珀色の瞳を優しく眇めて僕の耳に掛かる髪の毛をひと房掴んで整った鼻梁を押し当ててきた。
そこでまた温かい手のひらが撫でるように腹部を辿るから、涙で霞む視界で視線を下ろしたらお腹は痣だらけになっていてびっくりする。
「将継さん……。石矢さんは……ちゃんと更生出来ます、か? 僕がいたから、また罪を重ねさせちゃった……。僕が……将継さんと離れたくないって言ったせいで……」
「深月が石矢を庇う必要なんてちっともねぇんだってわかんねぇーか? 自分を犠牲にすんな。それは私にも言えることなんだわ。私は大切な深月が傷付けられていながら自分の怒りを犠牲にして黙認しようなんて絶対思えねぇんだ」
(大切な……僕……?)
その言葉に何か掻き立てるように心臓が早鐘を打って、軽く組み敷かれてほんの少ししか隙間のない将継さんの耳に鼓動が届いてしまわないだろうかとドキドキする。
「……僕、も……本当は……石矢さんにされたこと、悔しかった……。将継さんに、何もされてないって……嘘吐いちゃったこと……苦しかった……。ごめんなさい、嘘吐いてごめんなさい……。嫌いになったら、言ってください……」
僕の言葉に将継さんが再び眉間に深い皺を刻むので、怒らせてしまったかな?とそわそわしてしまう。
けれど、また頬に温かな唇が押し当てられて、「深月を嫌いになれる方法ってあんのか? あんなら教えて欲しいくれぇー私は愛おしくて胸が苦しくて仕方ねぇんだけど」と呟かれて。
瞳から絶えず雫が落ちて、その都度根気強く何度でも何度でも指がふやけてしまわないかと心配になってしまうほど優しく拭われて、次第に暗い心に明かりが灯っていくようだった。
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