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僕は再び将継さんの胸元の布地をギュッと握りしめて、先程の唇の温もりを思い出す。
「将継さん……」
「ん?」
多分、頬を真っ赤にしながら――。
「僕……キス、したの……初めて、です……」
将継さんが意表を突かれた顔をして、けれどすぐに嬉しそうに破顔して、今度は親指で唇に触れてきた。
「焼肉食った後だから、深ーいキスはまた今度な?」
なんて、冗談めかしてククッと笑う将継さんに僕の心はどんどん融け出して、やっと涙が引っ込み始めた。
「私が深月に今してやれる罪滅ぼしはなんかあるか? なんかして欲しいことはねぇーか? 石矢と二人っきりにしちまって本当に悪かった。深月に怖い思いさせちまった自分が許せねぇんだ」
僕はまた将継さんの胸元を握りしめて――。
「ギュってして……? ……窒息してもいいから……ギュッてして、ください……。駄目……ですか?」
その言葉に将継さんはガシガシと頭を掻きながら複雑そうな表情をするから、たちまちしどろもどろになってしまう。
(厚かましかったかな……?)
「ご、ごめんなさい! ワガママ言って……忘れて、ください……」
「いや、ワガママっつーか……そのお願いは罪滅ぼしどころか私にとってご褒美になっちまうから複雑なんだわ」
言って、身体を横に向けさせられて真正面からギュッと抱きしめられて「押し倒したまま抱きしめてたら腹痛ぇーだろ?」と言いながら腕の中に閉じ込めてくれた。
「深月が眠るまでぜーんぶ後回しにしてずっとこのまんまでいる。石矢のことは明日私がケリをつけるからなんも心配しなくていい。ちぃーと眠れそうか? 後で湿布貼ってやるから少し休むといい」
将継さんの肩に預けた頭をそっとコクリと縦に落としたら、その気配を感じ取ったらしい将継さんが痛む背中に力を込め過ぎないようにギュッと抱きしめてくれた。
身体は痛むけれども、心の痛みは将継さんの温かな言葉と腕と胸と――将継さんという存在でゆっくり綻んでいった。
(この気持ちを何て言葉にすればいいのかわからないけれど、僕はやっぱり将継さんのそばにいたい……)
拙い言葉を紡ごうとする代わりに、僕は将継さんの背中をギュッと抱きしめて、次第にほこほことした熱に包まれて眠りについた――。
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