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深月に酷い怪我を負わせた石矢にはキッチリと落とし前をつけさせてやる。
そう心に誓った私は、今朝病院から戻って深月を家の中に囲い込むなり、彼に帰りが少しだけ遅くなるかも知れない旨を伝えた。
「あの……危ないことをしたりとかで遅くなるんじゃ……ない、ですよね?」
遅くなる原因は石矢絡みではないかと心配そうに私の顔をじっと見上げてくる深月に、「大丈夫だよ」とだけ告げて微笑んで見せると、「いい子にして待ってろ。――な?」と頭を撫でてやる。
「可愛い深月に飯食わしてやんなきゃなんねぇし、言うほど遅くはならねぇよ」
夕飯を作る時間がなさそうだとしても、美味そうなものを買って帰るくらいは出来る。
もしくは一緒に外へ食いに行ってもいいだろう。
深月はきっと、夕食用に何か食えそうなものを用意しておいたとしても……私が帰らない限りは忠犬のように食べずに「マテ」をしている気がしたから。
「夜は私が帰るまで待つとして……昼は一人でもちゃんと食えよ?」
病院の帰り、自分の昼飯を買うついでだと唆して、深月にもおにぎりを買ってやった。
それを手渡しながら告げたら「……分かりました。でも……ホントに早く帰ってきてくださいね? ……待ってますので」と不安そうに瞳を揺らされて。
私は「ああ」と答えて、家を後にしたのだけれど、あんなに不安そうにしている深月を長く待たせていいはずがない。
サッサと片付けて帰らねぇとな、と思いながら携帯を取り出すと、古い馴染みの男に電話を掛けた。
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