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駐車場に車を入れて、助手席から石矢が降りてくるなり意味深にそう告げると「将継さん、それって……つまりは俺と……」と言いながら、腕にすり寄ってくる。
正直虫唾が走るくらいイラッとしたけれど、ここで警戒されては意味がない。
私は感情をグッと押し殺して「行くぞ」と素っ気なく告げると、ホテルのエントランスをくぐった。
***
十二階にある客室へ入るとすぐ、石矢が「俺、将継さんになら何をされてもいいですっ」とか情欲に潤んだ瞳でこちらを見上げてくるから……。
「なぁ、それ、本気で言ってんの?」
と石矢の髪の毛をグッと掴んで乱暴に顔を上向かせる。
「まさ、つぐ、さっ」
もっと丁寧に扱ってもらえるとでも思っていたんだろうか?
私は石矢の身体を荒っぽくベッドへ投げ飛ばすようにしてうつ伏せに押し倒すと、「なぁ、腕、縛ってもいい?」と背後から耳元へ吹き込むように囁いた。
いつもより低い声音になったのは、何もわざとではない。
ただ単に苛立ちを抑えようとした結果だったのだが、「将継さんって……ベッドではドSですか?」と石矢が恍惚とした様子で声を震わせるから。
「――さてね? どう思う?」
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