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将継さんは何時に帰ってくるだろうか。
一人には慣れているつもりだけれど、一人の孤独よりも誰かと分かち合う孤独の方がずっと寂しいのかもしれないな、なんてぼんやりと考えた。
早くまたあの優しい瞳が見たい、優しい声が聴きたい、優しく頭を撫でて欲しい、ずっとそばにいて優しくして欲しい。
僕に〝愛している〟と囁いてくれる将継さんに、僕は〝好きな人がいる〟と言ったような気がする。
確かに僕はずっと先生が好きで、先生以外の人間を信用していなかったはずなのに、今の僕の心の中は将継さんでいっぱいだ。
先生――。
今こそ、こんなよくわからない寄る辺のない想いを相談するのはまさに長年付き合ってくれている先生ではないだろうか?
そう思った僕は思わず枕元に置いてあったスマートフォンを手に取って、病院への連絡先をタップしていた。
すぐに繋がった受付で「あの、十六夜ですけど、久留米先生は今お話し出来ますか?」と訊ねた。
『申し訳御座いません。久留米は只今カウンセリング中です。折り返しお電話致しますか?』
(先生忙しいよな……。しかも先生に嘘吐いちゃったままなんだった……。でも――)
「……はい。いつでも大丈夫なので、よろしくお願いします」
今はどうしても先生に話を聞きたくて、それだけ告げて電話を切ると、僕はスマートフォンを胸元に置いてまたぼんやりと大人しく天井を見つめ続けた。
(寂しい……)
昨日も将継さんの帰りをこの家で一人で待ったのに。
今日の僕は不安なことがたくさんあって、身体は痛むけれども彼の優しい言葉や腕の温もりで胸の痛みは取れたはずなのに、一人になると途端に憂いがぶり返すようで。
再びスマートフォンを眼前に持ち上げて、新たに登録されたばかりの将継さんの連絡先を表示させてみる。
『将継さん、大丈夫ですか? 早く帰ってきてくださいね?』
それだけ打ち込んだけれど――。
(鬱陶しいって思われちゃうな……やめとこう)
僕は布団を頭まで被って、何だかよくわからない感情で溢れ出そうとする涙を、熱を持つ唇を噛み締めてこらえた。
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