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32.深月を騙し通せる強さ【Side:長谷川 将継】
さて、と言って相良を背後に伴ってベッドへ近付くと、芋虫のように転がったままの石矢が、ごくっと生唾を飲み込む気配がした。
「あ、あの……将継さん。お、俺っ、……三人プレイも嫌いじゃないですけど……ま、まずは将継さんと二人きりの方が……」
きっと、自分でもそんな雰囲気ではないというのは分かっているんだろう。珍しく言葉を詰まらせながら、まるで悪い可能性を潰したいみたいにベッドの上から私の方を振り返って言い募ってくる石矢に、思わず鼻で笑いたくなってしまった。
目に入っていないはずはなかろうに、私のすぐそばに立つ相良へ視線を合わせようとしないのは、石矢なりのせめてもの抵抗だろうか。
「――なぁ石矢よ。この状況で私がお前を抱こうとしてると……本気で思ってんのか?」
言いながらグイッと石矢の右肩に手を掛けて、うつ伏したままの彼の身体をひっくり返してあおむけにすると、下敷きになった手が痛んだのか、石矢が眉を顰めた。
そんな石矢の様子にはお構いなし。
私の背後に控えていた相良が無言で前へ進み出て石矢の胸倉をグイッと掴むと、強引に石矢の身体を引き起こしてベッドの上へ座らせる。
そうしておいて、自分もベッドへ上がると、石矢の背後から彼の両肩に手を添えて倒れないように固定してしまった。
「ちょっ、……触る、なっ」
旧知の仲の私から見ても、相良はそこにいるだけで結構な威圧感があると思うのに、そんな男相手にもしっかり憎まれ口が叩けるとは、ある意味大したものだなと感心させられて。
要はそれだけ石矢がまともじゃない生き方をしてきたと言うことだろう。
でも……だからと言って、そのまともじゃない生き様の矛先を、どんな理由があったにせよ私の可愛い深月に向けたことだけはどうしても許すわけにはいかない。
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明けましておめでとうございます。
本年もどうぞ『ネコヤモ』にお付き合い頂けたら幸いです!
鷹槻うなの×ちろる
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