32.深月を騙し通せる強さ【Side:長谷川 将継】

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 相良(さがら)は私の逡巡(しゅんじゅん)の真意を汲み取ったみたいにククッと笑うと、ベッドから降りて私の耳元に唇を寄せてきて。 「……殺しゃしねぇから安心しろ」  と、(ささや)いた。  そうして、そのついでみたいに「報復が終わっても、お前んトコに戻してやるつもりはねぇんだろ?」と耳打ちしてくるから。  私は「ああ」と答えたのだけれど。 「――じゃ、こいつのことは俺が責任持って引き受けるわ。……上手く仕込めばいい手駒(てごま)になりそうだしな」  とククッと笑う。  要するに、石矢(いしや)はもう表の世界には戻って来られないと言うことだと理解した私は、「お前に……そこまで任せていいのか?」と問い掛けずにはいられなかった。 「ま、餅は餅屋って言うだろ? 俺に任せとけって。まぁ、どうしても使えそうになかったらこっちも慈善事業じゃねぇし。そん(ときゃ)ぁー(うち)の方でテキトーにするから……。後のことは気にしなくていい」 「処分……」  不穏な言葉に、ふと相良の肩越しに見つめた先――。  泣きそうな顔で私を見つめる石矢と目が合ったのだけれど。  私は小さく吐息を落とすと、 「なぁ石矢。私は……お前が素直に罪を認めればまだ少しは情状(じょうじょう)酌量(しゃくりょう)の余地を残す気だったんだ。けど……お前にゃそのつもりはねぇみてぇだから。――残念だがうちの社にお前の居場所はもうない。あとのことはこの男に全部任せるから。今度こそ……誠意を見せてみろ」
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