680人が本棚に入れています
本棚に追加
/375ページ
相良は私の逡巡の真意を汲み取ったみたいにククッと笑うと、ベッドから降りて私の耳元に唇を寄せてきて。
「……殺しゃしねぇから安心しろ」
と、囁いた。
そうして、そのついでみたいに「報復が終わっても、お前んトコに戻してやるつもりはねぇんだろ?」と耳打ちしてくるから。
私は「ああ」と答えたのだけれど。
「――じゃ、こいつのことは俺が責任持って引き受けるわ。……上手く仕込めばいい手駒になりそうだしな」
とククッと笑う。
要するに、石矢はもう表の世界には戻って来られないと言うことだと理解した私は、「お前に……そこまで任せていいのか?」と問い掛けずにはいられなかった。
「ま、餅は餅屋って言うだろ? 俺に任せとけって。まぁ、どうしても使えそうになかったらこっちも慈善事業じゃねぇし。そん時ぁー組の方でテキトーに処分するから……。後のことは気にしなくていい」
「処分……」
不穏な言葉に、ふと相良の肩越しに見つめた先――。
泣きそうな顔で私を見つめる石矢と目が合ったのだけれど。
私は小さく吐息を落とすと、
「なぁ石矢。私は……お前が素直に罪を認めればまだ少しは情状酌量の余地を残す気だったんだ。けど……お前にゃそのつもりはねぇみてぇだから。――残念だがうちの社にお前の居場所はもうない。あとのことはこの男に全部任せるから。今度こそ……誠意を見せてみろ」
最初のコメントを投稿しよう!