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叶わない夢だと分かってはいるが、出来ることならいつか深月から「好きだ」と言われてから、互いに求め、求められる関係になりたい。
(咲江との時みたいに――)
まぁ。それこそワガママというものだろう。
手負いの野良猫のように警戒心が強かった深月が、少しずつ〝庇護者〟としての私を認めてくれ始めている。
中学生の時、義父から性的虐待を受けてきたせいで不能になってしまったと辛そうに告白してくれた深月が、ともすると彼の父親のように年上の私に対して懐きかけてくれているだけでも十分幸せなはずだ。
心に深い傷を負った深月に、私の汚い劣情をぶつけるわけにはいかないじゃないか。
ただ、可愛い飼い猫のようにゴロゴロと喉を鳴らして、こんな私に懐いてくれる。
それだけで満足しねぇとな……と、私は懸命に自分へ言い聞かせた。
***
「さて、飯、本気でどうすっかな」
外食はイヤだと深月が言うから。
今から外へ食材を調達しに行くのもなしだよな?と思ってしまった。
先日深月と二人、焼肉の材料を買いに出かけた先で石矢に捕まった前例もあるし、深月もそれを思ってあんなことを言ったんだろう。
まずいことに地元で社長なんてものをやっている私は、深月が思っている以上にここいらでは顔が広い。
町のあちこちに知り合いがいると言っても過言ではないし、商売をやっている関係から、基本誰にでも愛想よく接しているから……。
普通に生活していても声を掛けられる割合が普通の人よりは高めなのだ。
深月の言う、〝僕の知らない将継さんを知っている人〟なんて、正直な話、あちこちに散らばっている。
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ご報告が遅れましたが、2024/1/13より将継Side担当の鷹槻うなの、〝鷹槻 羽那〟に改名致しました。
それに伴い、あらすじ、一頁目、表紙画を微変更しております。
今後とも変わらぬご支援を頂けましたら幸いです。
詳細は羽那エッセイにて↓
https://estar.jp/novels/26179568/viewer?page=35
鷹槻 羽那×ちろる
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