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「お取込み中悪ぃーんだけどさ……、ピザ冷めちまうから金払っていいかな?」
困り果てた僕に将継さんが助け舟を出してくれて、武川さんは思い出したかのように配達員の顔に戻り、「あっ、さーせん!」と詫びて将継さんに金額を告げ、精算を始めた。
僕は将継さんが〝危ないオッサン〟呼ばわりされたことも何だか腹立たしくて悔しくて、グッと唇を引き結んだ。
将継さんは何も言わずに愛想良くにこやかに武川さんと接していて、そのことも何だか嫌だったのに――。
武川さんはまるで僕を挑発するかのように、将継さんにボックスを渡しながら、自然な動作で将継さんの手に触れた。
(将継さんの手に触った……)
目の前で将継さんに触れられる様に、昨日の石矢さんとのあれやこれやの一部始終を思い出してしまって。
石矢さんが将継さんに触れていた時は、まだ僕は恋を自覚していなかったけれど、今はその光景だけで胸が苦しくて仕方がない。
よっぽど酷い顔をしていたんだろうか――。
武川さんは「美青年、顔色悪いけど……、何か変じゃん? 俺から先生の耳に入れといてやるよ。明日病院だし」と言い放った。
そこで、今まで愛想良く武川さんに対応していた将継さんがどこか総毛立つような声音でポツリ、「兄ちゃん」と武川さんの瞳を射抜いた。
「さっきから人聞きの悪いことばっか言ってっけどさ……、深月は私の大切な子だし、深月も私を慕ってそばにいてくれてんだわ。先生とやらの耳に何を入れんのか知らねぇーけど……私を悪く言うのは構わねぇが、深月を悪く言ったら許さねぇぞ?」
ジロリと睨まれた武川さんは途端に怯んだように、「あ、あざっした! 美青年もまたな!」と言いながら逃げるように踵を返して行った。
残されて立ちすくんでしまった僕の頭に将継さんの手のひらが載るから、思わずギュッと将継さんの胸元の布地を握りしめてしまう。
「将継さんに触った……。僕、嫌です……。もう、こんなの……見たくない……」
「深月……」
頬に指が触れて、そこで初めて自分が泣いていることに気が付いた。
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