622人が本棚に入れています
本棚に追加
/335ページ
ヤツが深月と同じ医者に掛かっているとなると、あの男も何らかの問題を抱えているんだろうし、己れのメンタル面をケアしてくれる〝先生〟とやらに、私から受けた屈辱をも話さずにはいられないだろう。
その結果――。
美青年が誰彼構わず脅しを掛けるような酷い男に囲われてます。きっと美青年の知り合いを潰して彼を孤立させる気です、とでも言うかも知れない。
まぁ、その矛先が私に向いてるだけなら構わない。
そう思ったのだが――。
(そう言やぁ先生とやらは深月のことをどう思ってんだ? 深月はすっげぇ別嬪さんだし……もし深月にちぃーとでも気があるなら、武川の言葉は相手を焚きつける火種になるんじゃねぇか? んなことになっちまったら……治療とか何とか言って……私から深月を引き離そうとするんじゃね?)
それが心配になってしまう。
ふと視線を転じれば、玄関先。
すぐそばで泣きそうな顔をしてギュッと縮こまっている深月の姿が目に入って。
(怖い思いをさせちまったか?)
そう思って……深月は悪くないぞ?と頭にポンと手を載せて慰めてやったのだが。
「――っ!?」
途端深月に胸元へギュッとしがみつかれた私は、予想外の展開に驚いてしまう。
「将継さんに触った……。僕、嫌です……。もう、こんなの……見たくない……」
服を握られたまま深月に泣かれた私は、もしかしてヤキモチを妬いてもらえたりしているんだろうか?と有り得ないことを考えて。
いや、ねぇな……とすぐさまその可能性を否定した。
だって深月は〝先生〟とやらに気があるはずで――。
最初のコメントを投稿しよう!