36.〝俺〟を欲しがれよ【Side:長谷川 将継】

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 そう思ってしまうから余計。  そんな下らないことを(かさ)に着て、医者と深月の間を引き裂いてやりたくなるんだ。  だが――。  どす黒い感情が渦巻いたと同時、深月(みづき)が私のことを好きだと言った……。 (――聞き間違い……じゃ、ねぇ、よな?) *** 「なんで……謝るんだよ?」  深月が、先生から私への気持ちは〝恋〟だと指摘されたと言いながら、「ごめんなさい、好きになって――」とか言うから。  私は思わず立ち上がって小さく縮こまって項垂(うなだ)れる深月をギュッと腕の中に抱きしめていた。 「なぁ、深月。釣り合うとか釣り合わねぇとか関係ねぇだろ。それで言ったら私の年齢は一生深月にゃ釣り合わねぇよ。けど……そんなん全部すっ飛ばして……深月に愛してるって言わなかったか?」  深月が涙に濡れた瞳で私を見上げてくるのがたまらなく愛しい。 「好きな相手に好意を持たれてるって知って……迷惑だと思うやつがいると思うか? 私は深月がこんな私のことを好きだと言ってくれて……。――むしろ、すっげぇ嬉しいんだけど」  最後の最後。『むしろ、すっげぇ嬉しい』という文言だけ、わざと深月の耳元へ唇を寄せて……。  彼の耳朶へ直接吹き込むように声を低めて(ささや)けば、腕の中の深月が小さく身じろいだ。  私は、それさえ許したくないみたいに深月を抱く腕に力を込める。
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