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そう思ってしまうから余計。
そんな下らないことを笠に着て、医者と深月の間を引き裂いてやりたくなるんだ。
だが――。
どす黒い感情が渦巻いたと同時、深月が私のことを好きだと言った……。
(――聞き間違い……じゃ、ねぇ、よな?)
***
「なんで……謝るんだよ?」
深月が、先生から私への気持ちは〝恋〟だと指摘されたと言いながら、「ごめんなさい、好きになって――」とか言うから。
私は思わず立ち上がって小さく縮こまって項垂れる深月をギュッと腕の中に抱きしめていた。
「なぁ、深月。釣り合うとか釣り合わねぇとか関係ねぇだろ。それで言ったら私の年齢は一生深月にゃ釣り合わねぇよ。けど……そんなん全部すっ飛ばして……深月に愛してるって言わなかったか?」
深月が涙に濡れた瞳で私を見上げてくるのがたまらなく愛しい。
「好きな相手に好意を持たれてるって知って……迷惑だと思うやつがいると思うか? 私は深月がこんな私のことを好きだと言ってくれて……。――むしろ、すっげぇ嬉しいんだけど」
最後の最後。『むしろ、すっげぇ嬉しい』という文言だけ、わざと深月の耳元へ唇を寄せて……。
彼の耳朶へ直接吹き込むように声を低めて囁けば、腕の中の深月が小さく身じろいだ。
私は、それさえ許したくないみたいに深月を抱く腕に力を込める。
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