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朝日が昇るまで勝手に家を徘徊して、トイレを借りたり、ソワソワしながら時が経つのを待った。
でも、時計の時刻が早朝五時を過ぎた頃にはどんどん恐怖心が込み上げてきて身体が慄く。
再び部屋を徘徊して脱衣所に辿り着いた。
そこで――。
僕の服が洗濯されて干されているのを見つけて。
これで帰れる!と急いでハンガーから外してみるとまだ生乾きだった。しかし、背に腹はかえられぬ。
というか、洗濯されているということは、まさか酔い潰れた挙句、嘔吐でもして汚してしまったのだろうか……。
見ず知らずの人が、嘔吐までした人間をこんな風に介抱してくれるなんて……。
先程の布団の中の住人は、どこまでもお人好しのようだ。
(だったら……怖くないのかも?)
でも、やっぱり見ず知らずの、更には歳上の男性というのはどうしても僕の恐怖の対象で。
とりあえず、まだ乾いていない衣服を抱えてリビングに戻る。
そういえば、今日は月に一度の受診日だった。
予約時間は十時だし、尚のこと、ここでゆっくりさせてもらっている場合じゃなく早く家に帰らねばならない。
しかし、ここがどこなのかもわからないし、タクシーを呼ぶにしてもここの住所がわからないから呼びようがない。
(適当に外に出て歩いてみようかな……?)
僕は財布に入っていた数枚の千円札を財布から出して座卓に置くと、借りていたスウェットを脱いだ。
湿った服に袖を通すのは憚られたけれど、そんなことを言っている場合じゃない。
一刻も早く着替えを済まそうと衣服を手に取ると――。
目の前で、襖が開いた。
この家の主が眠そうに目を擦りながらこちらを見て、しばし呆然と僕を見つめて目を瞠った。
最悪だ……。
色々してもらっただけでもどう謝罪したらいいのかわからないというのに、まさか下着一枚しか身に纏っていない状態で対面するなんて。
「深月くん……?」
え? 何で僕の名前──。
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