37.誰にも譲りたくない【Side:十六夜 深月】

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 荒い吐息が収まるまで唇をふやかした将継(まさつぐ)さんがそっと離れていき、僕のお腹に溜まった粘液を指でぐるぐると掻き回すから、くすぐったくて小さく笑い声を立てると、やけに切実な色を滲ませた瞳で見つめられた。 「――なぁ、深月(みづき)」  キョトンと小首を(かし)げると、将継さんの濡れた指が下肢の最奥にある固く閉じられた(すぼ)まりに押し当てられるから――。 「――ひっ!」  その場所は深いトラウマに直結している部分で、自然と古い記憶が雪崩(なだ)れのようにフラッシュバックして、身体がかたかたと震え始める。 「すっげぇ怖いのはわかってる。でも……は深月と一つになりてぇんだ。何もいま挿入(いれ)させてくれとは言わない。ただ――少しだけでいいから先に進ませて欲しい。いつか深月の全部もらうために」  その言葉を頭にじわじわと浸透させている最中、将継さんが耳朶で畳み掛けるように「愛してるから、欲しいんだ」と、濡れた吐息を吹き込んでくるから。 (そんな求め方はずるい――)  〝愛〟を盾に取られたら、身体は追いつかないかもしれないけれど、心が将継さんに寄り添いたくて拒むことが出来なくなってしまう。 「……僕、も……もっと、将継さんと近付きたい……けど、……」 「なんも考えなくていい。深月がのことを好きになってくれたのはわかったから、最後まではしない。待つ。約束する。これから深月ん体内(なか)を触んのは義父(おやじ)じゃない、だ。それでも怖いか? まだ信用出来ないか? まだ〝好き〟って気持ちは〝恐怖〟より弱いか?」 (なんか……僕の〝好き〟が疑われてるみたいでやだ……信じて欲しい……) 「……そんな、こと……ない……。信じて、ます……。好き……です……好き……だから、頑張り、ます。まさ、つぐさんと、もっと……繋がれるように……。頑張るから……僕の〝好き〟も、疑わないで、ください……本気、だから」  それだけ呟いて開いた膝は、自分でも情けなくなるくらいに震えていたけれど、〝好き〟はこんなにも大きいんだって伝わって欲しかったから。  将継さんの指が窄まった場所の(ふち)を丹念に揉み始めたと同時、彼の首にギュッと抱きついたら、まなじりから雫が溢れた。 (将継さんとなら、越えていける気がする……大丈夫)
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