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荒い吐息が収まるまで唇をふやかした将継さんがそっと離れていき、僕のお腹に溜まった粘液を指でぐるぐると掻き回すから、くすぐったくて小さく笑い声を立てると、やけに切実な色を滲ませた瞳で見つめられた。
「――なぁ、深月」
キョトンと小首を傾げると、将継さんの濡れた指が下肢の最奥にある固く閉じられた窄まりに押し当てられるから――。
「――ひっ!」
その場所は深いトラウマに直結している部分で、自然と古い記憶が雪崩れのようにフラッシュバックして、身体がかたかたと震え始める。
「すっげぇ怖いのはわかってる。でも……俺は深月と一つになりてぇんだ。何もいま俺を挿入させてくれとは言わない。ただ――少しだけでいいから先に進ませて欲しい。いつか深月の全部もらうために」
その言葉を頭にじわじわと浸透させている最中、将継さんが耳朶で畳み掛けるように「愛してるから、欲しいんだ」と、濡れた吐息を吹き込んでくるから。
(そんな求め方はずるい――)
〝愛〟を盾に取られたら、身体は追いつかないかもしれないけれど、心が将継さんに寄り添いたくて拒むことが出来なくなってしまう。
「……僕、も……もっと、将継さんと近付きたい……けど、……」
「なんも考えなくていい。深月が俺のことを好きになってくれたのはわかったから、最後まではしない。待つ。約束する。これから深月ん体内を触んのは義父じゃない、俺だ。それでも怖いか? まだ信用出来ないか? まだ〝好き〟って気持ちは〝恐怖〟より弱いか?」
(なんか……僕の〝好き〟が疑われてるみたいでやだ……信じて欲しい……)
「……そんな、こと……ない……。信じて、ます……。好き……です……好き……だから、頑張り、ます。まさ、つぐさんと、もっと……繋がれるように……。頑張るから……僕の〝好き〟も、疑わないで、ください……本気、だから」
それだけ呟いて開いた膝は、自分でも情けなくなるくらいに震えていたけれど、〝好き〟はこんなにも大きいんだって伝わって欲しかったから。
将継さんの指が窄まった場所の縁を丹念に揉み始めたと同時、彼の首にギュッと抱きついたら、まなじりから雫が溢れた。
(将継さんとなら、越えていける気がする……大丈夫)
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