37.誰にも譲りたくない【Side:十六夜 深月】

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「まさつ、さ……将継(まさつぐ)さ……あっ、ぅ、あ……も、助けてっ……出そ……なのに、出せっ……ないっ」  お腹の上に吐き出した粘液を何度も指で(すく)って、ぐちぐちと恥ずかしい音を立てながら胎内(なか)(まさぐ)られ、違和感はどうしようもないむず痒さに変わったけれど。  それに呼応するように膨れ上がっていく下肢の欲望には触ってもらえず、あと一歩のところで終点へ辿り着くことが出来ない。 「出来れば中で()かせてやりたかったけど……初めてじゃ難しいか……。――ちゅーか、がもう限界だ」  言って、指がズルッと退いていく摩擦に「ぁ、んっ」と声が漏れて、まだ彼の指の形が残っている感覚は消えないけれど、喪失感に一気に身体の力が抜けた。  体内を掻き回され続けて埋火(うずみび)のように全身をくたくたと(さいな)む快楽に見舞われながら、ぐったり四肢を投げ出していると、彼は手早く身に着けていた衣服を脱ぎ捨て裸身(らしん)で覆いかぶさってくる。  将継さんの隆々とした雄が僕の未熟な(おす)とぴたりと重なり、まとめてそれを握り込まれれば、彼の欲望はびっくりするほど熱かった。  重なり合う胸も、腕も、足も、全てが熱を(はら)んでいて、それは僕の身体が汗でしっとり濡れているせいなのか、将継さんの身体が昂っているのか、両方なのか。  迷いも惑いも不安も、何もかも熱で煮えていく。  ただ、ひたすらに彼が恋しい。  ただ、ひたすらに彼が愛しい。  無理矢理奪い去られてもよかったのかもしれない。  けれど、将継さんはあくまでも僕の意思を尊重してくれて、ともすれば自分よりも僕を大切にしてくれた。  それだけで、涙がこぼれそうだ。  やがて将継さんの指が滑り出して、(くすぶ)っている(にご)りを吐き出そうと身体が震え、互いの情欲から(したた)る蜜は、彼の手首までをも濡らしているのがわかった。 「……っ、深月(みづき)も、握ってみ?」  言われるがまま二人分の熱が握りしめられている将継さんの手の甲に手のひらを重ねたら、トクトクと動悸を刻んでいて。  本当の意味ではまだ彼と一つにはなれなかったけれど、脈打ち、息づくその拍動(はくどう)だけで、心の中は瞬く間に幸福な気持ちで飽和(ほうわ)した。 「まさつ、さ……まさ、つぐさ……僕、もう出ちゃっ……う、っ」  ギュッと首に腕を絡ませたら、将継さんが耳孔にぬめりと舌を挿し込んでくるから、弱い部分への愛撫は半ば頭の中が白みがかってくる。  身体の奥から劣情が込み上げ、身体中の血液が将継さんの指の中に集まっていこうと激流の音を立てた。
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