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38.キミを甘やかす権利【Side:長谷川 将継】
互いの熱を高め合い、ほぼ同時に果てたあと――。
全力疾走したあとのような気怠い微睡みに誘われて私の腕の中。
気持ちよさそうに寝息を立て始めた深月を見て、何ともむず痒い思いに囚われた私は、深月を起こさないように気を付けながらそっと布団から這い出した。
一糸纏わぬ裸のままあぐらをかいてガシガシと髪を乱雑にかき乱してから、布団そばに置かれた眼鏡を手に取った。
それを掛けて再度深月を見下ろせば、汗で額に髪の毛が張り付いていて。
それすらもやけに艶っぽく見えて困ってしまう。
部屋の中には精液特有の青臭い香りが充満していて、つい今し方深月と〝そういうこと〟をしたんだと言うのをまざまざと突きつけられて。
(深月ん中、熱くうねって私の指を離したくないみたいにキュッと締め付けてきたっけ)
そんなことをふと思い出して、深月に埋めた手指を無意識に見下ろした。
二人で吐き出した欲望の残滓は、下へ組み敷かれる形になっていた深月の腹を存分に汚して、今もなおぬらぬらと濡れ光っている。
(布団カバー洗ってやんねぇとな)
ふと、ここが深月の寝床だったことを思い出してそんなことを思いながら、私は剥き出しのままになっている深月の身体へ布団をそっと被せてやった。
本当なら汚れを拭ってやってからそうしてやるべきだと頭では分かっている。
だが――。
(さすがに目に毒過ぎんだろ)
深月の前では恰好をつけて最後まではしないと宣言したが、私だって男だ。
いくらふたりで欲を抜いたからって、好きな相手の無防備な裸を見せつけられて手出しをしないと言うのは中々に忍耐力を要するのだ。
(やべぇな)
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