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吐精後の気怠さの中、私は小さく吐息を落とした。
(深月の心の準備が整うまで……俺はちゃんと『待て』ができるだろうか)
ふとそんなことが気になった――。
***
「深月、風呂行くぞ?」
湯張りが済んで、風呂場全体がほんのり温かくなったのを確認してから、私は布団の中へ置き去りにしてきた深月の元に戻った。
艶やかな黒髪を優しく耳に掛けるように撫でながら、彼の耳元に唇を寄せてそう囁けば、潤んだ黒瞳が「……ふ、ろ?」とどこか夢見がちな様子で私を見上げてくる。
自分だけ一足先にシャワーでザッと汚れを流していた私だけれど、それでも深月を風呂に入れることを想定して、今もなお腰にタオルを巻いただけの裸同然の姿だ。
髪はタオルドライしただけで湿っぽいまま。眼鏡は脱衣所に置いてきて裸眼だったから、その姿が深月的には見慣れなくて余計に落ち着かないんだろう。
「ま、将継さっ、……その恰好は……反則、です」
自分だって布団の中は全裸の癖に、慌てたように私の肌から視線を逸らす深月が可愛くて、思わずククッと喉の奥からこらえ切れない笑い声が漏れた。
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