38.キミを甘やかす権利【Side:長谷川 将継】

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 吐精後の気怠さの中、私は小さく吐息を落とした。 (深月(みづき)の心の準備が整うまで……はちゃんと『待て』ができるだろうか)  ふとそんなことが気になった――。 *** 「深月、風呂行くぞ?」  湯張りが済んで、風呂場全体がほんのり温かくなったのを確認してから、私は布団の中へ置き去りにしてきた深月の元に戻った。  艶やかな黒髪を優しく耳に掛けるように撫でながら、彼の耳元に唇を寄せてそう(ささや)けば、潤んだ黒瞳が「……ふ、ろ?」とどこか夢見がちな様子で私を見上げてくる。  自分だけ一足先にシャワーでザッと汚れを流していた私だけれど、それでも深月を風呂に入れることを想定して、今もなお腰にタオルを巻いただけの裸同然の姿だ。  髪はタオルドライしただけで湿っぽいまま。眼鏡は脱衣所に置いてきて裸眼だったから、その姿が深月的には見慣れなくて余計に落ち着かないんだろう。 「ま、将継(まさつぐ)さっ、……その恰好は……反則、です」  自分だって布団の中は全裸の癖に、慌てたように私の肌から視線を逸らす深月が可愛くて、思わずククッと喉の奥からこらえ切れない笑い声が漏れた。
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