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39.招かれざる客【Side:十六夜 深月】
将継さんに抱え上げられて、ほこほこと温めてくれていたらしいお風呂場に入るなり、すぐに風呂椅子の上にそっと身体を降ろされた。
まだ寝起きで頭がぼうっとしていたけれど、はたと顔を上げたら、全裸の自分と背後に立つ将継さんのタオルが巻かれただけの下肢が鏡に映っていて、羞恥に一気に頭が覚醒した。
「あ、あの……将継さん……。僕もタオル、欲しいです……」
俯いてごにょごにょと喋ると、将継さんは「いまさら隠すモンなんてあるか?」と、ケロッと返事をしてくるので、まだ湯船に浸かってもいないのに頬はのぼせた。
「で、でも、恥ずかしいから……嫌、です……」
確かに先刻まで全裸でもつれ合っていたけれど、それは脳内が媚薬のように与えられた快楽で酩酊状態だったからで、冷静な頭で〝好きな人〟に恥部を見られるのは落ち着かない。
チラッと鏡越し、将継さんがしゃがみ込むのが見えて、同時に僕の太腿にタオルが掛けられたので、「えっ?」と振り向くと、彼は己の腰に巻いていたタオルを僕に被せてきたようで――。
途端、視界に宿ってしまった将継さんの下腹に、筆でサッと刷いたように頬に朱がさして、慌てて正面を向いて見なかったことにするけれど、しっかり目の奥に刻まれてしまう。
別に、そこは形を変えているわけでもないのに、自分だけがいやらしく意識しているようで、恥ずかしすぎていたたまれなくなった。
(将継さんは純粋に一緒にお風呂に入って身体を洗おうって言ってくれただけなのに、僕は何を考えて……)
かぁっと頬を染めて俯くと「いつまでも初々しいとこ、マジでたまんねぇな」なんて言いながら耳の裏を舌でくすぐってくるから「ひゃっ!」と身体が跳ねる。
「私は何も邪なことは考えてねぇけど……深月は違うのか? なんか期待してる? 期待されてんならリクエストに応えるけど?」
ククッと笑いながら鏡越しに瞳を射抜かれるから、思わず「将継さんの意地悪……」とポツンと呟いたら、よしよしと頭を撫でられた。
(将継さんと好き同士になれたけど、心臓が持たないっ!)
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