39.招かれざる客【Side:十六夜 深月】

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「ほら、深月(みづき)。腹汚れてるから先に流すぞ?」  言って、将継(まさつぐ)さんはシャワーコックをひねって温水を掛けながら、僕のお腹にそっと手のひらを這わせるから――。 「ま、将継さん……! 僕っ、自分で、洗えます……から!」 「深月を甘やかす権利、もらったはずだけど? 深月は私に甘やかされてどろどろになってりゃーいい」  なんて、泡で出てくるボディーソープを数プッシュ手のひらに纏わせて、僕のお腹から臍下(へそした)をゆるゆると優しく撫で(さす)る。 「将継さん……くすぐったい、です……僕、自分で……」 「却下な?」  すかさず却下されてしまい、しゅんとしたのも束の間、腹部を綺麗にした彼の手は徐々に移動し、今度は胸に手のひらを這わせられた。  まだ、先程の戯れの余韻で、軽く触られるだけでもとくんと疼きそうになるのに、彼は突起の周りの色付きを円を描くようにぐるぐると撫で回してくる。 「……っ」  意図してなのか、していないのか、やがて胸のしこりを(つま)むように触れられるから「……んっ」と甘い吐息が漏れて、下肢の欲望に火が(とも)りそうで目をぎゅっと閉じた。  彼に触れられている部分から淫らな熱の波にさらわれそうになって身を(よじ)るけれど、将継さんは僕を洗っているのか、それとも愛撫しているのか、どちらとも取れない手付きで翻弄(ほんろう)してくる。  胸元に手のひらが這ったまま、片手は僕の肩から腕を道筋をつけるようにゆるやかに泡を纏わせてくるから、淡い(しび)れは渦巻き、発熱する。  僕の手を取った将継さんに、まるで恋人繋ぎでもするかのように指を一本一本まで丹念に揉み(ほぐ)されれば、指まで性感帯になったような気がして。  タオルの下、欲望が目覚めているのがわかる。 「ま、将継さん……絶対わざと……だ……」 「んー? 何が?」  言いながら、彼の手はきわどい太腿の付け根を辿り、タオルをサッと払って()ち上がっている情欲をさらりと一撫でするから、思わず「ひゃっ!」と椅子から立ち上がってしまう。 「深月、急に立ち上がってどうした? あ、そっか。座ってたら洗えねぇーもんな?」  言葉と同時、臀部(でんぶ)をそっと撫でて、まだ中に指の感触が残っている(すぼ)みにゆるりと指の腹を押し当てられるから――。 「やっ……まさ、つぐさ……そこ、もう駄目っ……」 「言ったろ? 深月の身体の隅々まで洗ってやるって。ここもちゃーんと洗わなきゃ駄目だと思わね?」  ククッと笑った将継さんの指が、泡の(ぬめ)りで容易(たやす)く一本差し込まれるから、「あっ、ぅ……ゃ……」と(うめ)き声が漏れ、思わず立ち上がったまま彼の肩にしがみつく。 「深月ん中、早くの指の形を覚えたいってキュウキュウ締め付けてお願いしてくるから望みを叶えてやんねぇとな? ――深月を甘やかさないといけねぇし?」
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