39.招かれざる客【Side:十六夜 深月】

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「ぼ、僕、そんなお願いしてな――あぁっ、やっ!」  将継(まさつぐ)さんの指が、未知の快楽を覚えたばかりの場所をグッと押し込んでくるから、堪えきれない嬌声(きょうせい)が喉奥から浴室に反響して、自分の喘ぎ声なのだと耳に刻み込まされる。 「なぁ、深月(みづき)。甘やかす権利ついでに、たちの関係がどうなったのかも……甘い言葉で教えてくんね?」  言いながら、将継さんの指はすりすりと恥ずかしがるように柔襞(やわひだ)に埋もれている快楽の火種を(さす)り続けるから、膝ががくがくと震え始める。 「僕……あっ……ん……たちの、っう、く、ぁ……関、係?」 「――そうだ。両想いになったってことは、もう飼い主と拾い猫じゃねぇ。恋愛事に疎い深月でも、さすがにわかると思うんだけど?」 (両……想い……って、恋、人?)  頭にぽやんと甘美な単語が浮かんだけれど――。  そんな大それたことを言っていいのだろうかと逡巡(しゅんじゅん)している間にも、将継さんの指は敏感な場所を押し潰すから濡れた声しか出なくなってしまう。 「まっ……て、ま、て……そこっ、あっ、触られたらっ……は、ぁっ、ん……何もっ、考え、られないっ……」  必死に訴えると、将継さんの指は体内(なか)からすっと退いた。 「ほら、やめたから……言える?」  いざ止まってみると、今度は中途半端な劣情が苦しくて、くぷっと将継さんの指が抜けた(すぼ)まりが、ひくひくと物欲し気にきゅんと疼いて、違和感は癖になりそうで怖い。 「あ……は、ぅ……恋……人……?」  切れ切れの息で言ったら、将継さんは嬉しそうに笑って、再び僕を横抱きに抱え上げるから「わっ!」と声を漏らすと、そのままお湯が張られた浴槽の中に連れ込まれた。  湯船の中、僕を膝の上に乗せるように背後からギュッと抱きしめて「――そう、深月はの恋人だ」と、耳朶で囁いてくる。  びくっと身体を縮こませたら、痛いくらいに膨れ上がっている下肢の欲望にそっと指が絡んで、「に甘やかされて、こんなに素直に感じてくれてんの?」なんて耳孔にぬめりと舌を差し込むから――。  弱い部分への愛撫は、いとも簡単に僕を篭絡(ろうらく)させた。 「……うん……まさ、つぐさん……、になら、何されても……気持ちい……」  はしたない言葉を唇から消え入りそうな声音で絞り出すと、将継さんは膝の上に乗せていた僕をぐるっと反転させて正面に向き合った。  ぴちゃっとお湯が跳ねた音が妙に生々しい。  ギュッと目を閉じたら唇を塞がれるから、浅ましい欲求も呑み込まれた気がして、彼に甘やかされるまま心までぐずぐずと()けていった。
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