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浴槽の中で僕を抱きしめたまま、将継さんは耳元に吹き込むように、頭の芯に浸透させるように、低められた声で囁いてきた。
「――そういえば、さ。さっきの話、いつにする?」
「……さっきの、話……です、か?」
キョトンと将継さんの肩に顎を載せたままオウム返しに問いかけたら、彼は僕の耳朶を甘噛みしてくるから、まだ熱い身体がびくっと震える。
「いつ深月の全部もらうか?っちゅー話」
その言葉を思い出した頬は、瞬く間に灼けついて。
「え、えっと……その、……まだ、緊張してて……。指……挿入った感触だけで……変で……。こんなんじゃ、将継さんを受け入れる自信なくて……まだ、怖いです……。あ、そうだ! ま、将継さんは……今、出してないです! 僕、何かすること……ありますか……?」
言ったら、彼は再び僕の唇を塞いだ。
キスは重ねるたび温度が上がって、吸われ過ぎた唇はぽってり腫れ上がっているような感覚がするし、長く湯船に浸かっているせいか急速に体温まで上がり、のぼせそうになってしまう。
「私のことなら気にすんな。深月に内緒で大人の余裕見せられるようにしといたから。――ちゅーか、まだ怖ーか。まぁ、待たされれば待たされるほど、期待値も高まるってモンかな。でも、そう遠くない日がいいって言ったらワガママか? 早く深月ん中に挿入りてぇ。今月中……とか、駄目?」
(今月ってあと三週間くらい……?)
「わ、ワガママじゃない、です! 僕も……それまでに、ちゃんと出来るように頑張る、から……、釣り合えるように頑張る……から……そばに置いてください……。すぐには、何も、出来ませんけど……」
「だから釣り合う釣り合わねぇは関係ないって言わなかったか? ――恋人、じゃねぇの? 私は深月に甲斐性があるって思われてぇんだ。何も出来なくても堂々とそばにいてくれていいから」
その言葉は僕の弱い心を捕らえるのには十分過ぎて、わけもなく泣きたくなるような気持ちになって、将継さんにギュッと抱きつく。
もう有無を言わせないのだと、彼はニッと笑って「のぼせちまうから、髪洗っていい加減出るか?」と、優しく頭を撫でてくるから。
僕はパシャッとお湯を顔に掛けて涙を隠した。
(バレてない、よね)
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