40.トラブルと後悔【Side:長谷川 将継】

4/5

680人が本棚に入れています
本棚に追加
/377ページ
「なるべく早く戻るから。――頼んだぞ?」  すぐそばに突っ立ったままの田村の肩をポンと叩いて言ったら、彼が弾かれたように「が、頑張ります!」とガチガチに強張った顔で返事をする。  こういうのが本当に不慣れなんだと思うとどうも申し訳なくて、私は落ち着いたら昼飯でも(おご)ってやるか、と思った。 ***  とりあえず『長谷川(はせがわ)建設』と社名が入った軽トラに乗り込んだ私は、清水と財間(ざいま)が担当している住川(すみかわ)工業の現場へ向かった。  事故に遭ったと言う清水の安否も気になるが、どこの病院へ運ばれたのか分からない現状では動きようがない。  何か進捗(しんちょく)があれば、あちらから会社へ連絡が入るだろう。  それもあって、電話番として田村を会社に残してきたのだ。  限られた人数しかいない中、出来ること、出来ないことを的確に仕分けして、最善を尽くす。  そうやって私は、自分の小さな会社を何とか回してきたのだ。  うちの社の人間は、すねに傷のある(やから)が多いが、みんな真面目に会社のために頑張ってくれているやつばかりだ。  彼らを路頭に迷わせないようにする責任が、私にはある。  石矢(いしや)のようにどうにもならない人間も、たまにはいたりするけれど、そんなのは極めて(まれ)だ。  携帯をマナーモードに切り替えた私は、助手席に携帯を置いた状態でハンドルを握った。
/377ページ

最初のコメントを投稿しよう!

680人が本棚に入れています
本棚に追加