42.私は深月のことを何ひとつ知らない【Side:長谷川 将継】

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 ふと思い立って間に一件。  馴染みの仕出し屋へ電話をかけると、昼に特上弁当をひとつ事務所まで配達してくれるよう手配する。  支払いは私のツケにしてもらうよう頼んだら、常連ということもあって快く引き受けてくれた。  そのまま今度は事務所からの着信履歴に折り返すと、電話番を任せている田村に今日は一日電話番を頼みたい旨を伝える。  昼は、仕出し屋に出前を頼んでおいたから、慣れないことをさせられた礼だと思って食ってくれたら助かると付け加えれば、『いいんっすか!?』と嬉しそうな声が聴こえてきた。 「もちろんだ。それとは別に、今度会社のみんなで昼飯でも食いに行こうな」  私の誘いに田村が電話口で『わー、すっげぇ楽しみです! 社長! マジで有難うございます!』と耳が痛くなるくらいの大声で喜んでくれた。 ***  これで一通り会社絡みのことは済んだはずだ。 (今度こそ深月(みづき)に)  そう思ってスマートフォンに視線を落としたと同時。  電話をしていた間に新着メッセージが来ていたらしい。 「深月……」  視線を落とせば、それは深月からのもので。  私は急いでメッセージアプリを立ち上げたのだけれど。 「何だよ、これ……!」  画面には『将継(まさつぐ)さん、恋人になれて嬉しかったです。こんな僕に愛してるって言ってくれて幸せでした。ずっとそばにいたかった。でも、僕のことはもう嫌いになってください』という文字が表示されていて。  嫌いになって下さい?  嬉しくて幸せでずっとそばにいたいのに……?  意味分かんねぇだろ!  私はグッとスマホを握る手に力を込めると、深月の電話番号を呼び出してタップした。  だが、コールをすれどもすれども愛しい深月の声が聴こえてくることはなくて。  焦燥感ばかりが募ってしまう。  なぁ深月。お前がこのメッセージを送ってからそんなに時間、経ってねぇだろ! 「何で電話に出ねぇーんだよ!」  今すぐにでも病院へ駆け付けて、深月を腕の中へ抱きしめてから、どういう意味だ!?と問い詰めたい。  だが――。
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