43.少しだけ休ませて【Side:十六夜 深月】

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*** 「よぉ、美青年。何してた?」  仕事を終えた武川(たけかわ)さんが再びやってきたのは夜も遅くになってからで、僕は何をする気にも、何を食べる気にもなれずベッドに腰掛けて項垂(うなだ)れていた。 「……別に、何もしてません……」 「なぁ、スマホ、めっちゃ鳴ってたぞ? あのおっさんも諦めが悪いんだな? 執着されまくりじゃん? 美青年、先生になんて言われたの?」 「……来月の予約日までに……将継(まさつぐ)さんと、離れないと……いけないって……」  そうしないと、通報されるとは言えなかったけれど。 「――俺さ、今日一日美青年のスマホ持ってて、すっごいムカついたんだよな。おっさんから電話鳴りまくって」 (将継さん、僕にたくさん電話くれたんだ……)  あんなメッセージを送った僕を、彼はきっと不思議に思っているだろうし、裏切ったと思われているかもしれない。 「美青年には言ってなかったけど……俺がPTSDになったのって、嫁とガキをあのおっさんくらいの年齢の男に盗られたからなんだ。俺を愛してくれる奴なんていないって途方に暮れた。そんな時に病院で美青年見つけてさ。ああ、コイツも一人なんだな、仲間じゃん?って思って声掛けた。でも――美青年はこんなに執着されてるんだって思ったら腹が立った」 「武川さん……」  辛そうに武川さんがこぼした言葉に、僕は一瞬同情を覚えてしまったけれど、次に武川さんが放ったのは、どこまでも冷たい言葉だった。 「……だから、今からこのスマホで、あのおっさんに『大嫌いになりました。二度と近付かないで』って送っていい? つーか、美青年の許可なく送っちゃおうとも思ったんだけど、さすがにそれは酷いかな?って思ったけど――どうよ?」 「そ、そんなのヤダ……僕、ちゃんと時間までに将継さんのこと、忘れる……から……彼を、傷付けないで……。お願い、します……武川さん……」 「じゃあさぁ――仲良くしようぜ? 美青年?」  言って、武川さんは僕の身体を無理矢理ベッドに押し付けて、力ずくで組み敷いてくるから。 「や、武川さんっ……!」 「なぁ、美青年ってなんの病気なの?」
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