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44.深月に何かしやがったのか?【Side:長谷川 将継】
『――で、どういう状況なんだ』
あの後、もう一度自分の血で汚れた深月のシーツを洗濯機に放り込んだ私は、藁にもすがる思いで腐れ縁の相良京介へ電話を掛けた。
電話で事情を一通り話してから、「……仕事も絡んでねぇのにこんなことを頼むのはお門違いなんだが」と前置きをして、「どうか力を貸して欲しい」と切り出したら、電話越し。相良があからさまに溜め息を落とした。
『なぁ長谷川。俺、前に言わなかったか? お前の頼みは何だって聞いてやるって』
たかだか小さい頃にちょっと親から虐げられていたコイツに優しくしただけだと言うのに。
この男はどこまでも義理堅い。
「すまん」
『バーカ。全然すまなくねぇから謝んな。――で?』
「ん?」
『今日仕事が終わるのは何時なんだ? どうせこんなクソみてぇな状況でもお前のこった。社長業は社長業でちゃんとこなしてからじゃねぇと安心して動けんとか何とか言うんだろ?』
さすが幼なじみ。
全てお見通しだと言った調子でそう言われた私は、力なく「ああ……」とつぶやいた。
深月のことはもちろん死ぬほど心配だ。
今すぐにでも市内にある彼が通っていそうな病院という病院を手当たり次第。しらみつぶしにしてでも深月の手掛かりを掴みたい。
だが――。
実際問題として、私には社員を守る義務もある。
人一倍他人のことを考える深月のことだ。戻ってきた時、自分のせいで他の人間にしわ寄せがいっただなんて知ったら、きっと間違いなく自分を責める。
私は、深月に絶対そう言う負い目だけは感じさせたくなかった。
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