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自分でも薄々そんなことを考えていたくせに、相良の口から同じことを言われたらどうにも信じたくなくて。
そう問い掛けずにはいられなかった。
グッと拳を握りしめて怒りを堪えながら疑問を投げ掛けたら、相良が小さく吐息を落として。
「ま、そいつは今から会わせる男に聞いてみるこった」
その言葉に「え?」とつぶやいたのと同時。
車がゆるやかに停車したのを感じた私がふと視線を転じると、どうやらどこかの物流倉庫の前に着いたらしい。
「うちの組が持ってる倉庫のひとつだ。滅多なことじゃ部外者は近寄れねぇから内緒ごとをするのに丁度よくてな。ま、入れや」
相良に促されて車を降りるより先、石矢が私たちに傘を差し掛けてくれる。
その洗練された動きに、相当しつけられているんだなと感じた。
倉庫の中には手足を縛られて転がされた男の姿があって。
その男を監視するように二人の男が付いていたけれど、相良を見るなり深々と頭を下げて後ろへ引き下がる。
くぐもった声を上げながら芋虫のようにもがいているところを見ると、横たわった男は猿轡も嚙まされているらしい。
「うちの組の息が掛かってる業者があちこちにあんのはお前も知ってんだろ? ま、そう言うトコに設置させてる出入り口付近撮影用の防犯カメラをうちの若い者にしらみつぶしに当たらせたらな、お前ん家から連れ出したと思しき深月ちゃんを連れてるコイツの姿が映っててな」
その精査に時間が掛かって、件の男を捕まえるのが遅くなってしまったと詫びながら、相良が足でグイッとひっくり返すようにして男の顔をこちら側へ向けさせる。
「ま、それだけならまだしも。どうやらコイツ、お前の可愛い深月ちゃんを軟禁してるっぽいんだわ」
その顔には、見覚えがあった。
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