45.幻でもいいから【Side:十六夜 深月】

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 今が何時なのだろうかと確認したかったけれど、スマートフォンは武川(たけかわ)さんが持っているから、普段は滅多に見ない十四インチのテレビの電源を押す。  流れてきた朝の情報番組の画面左上に表示されている時刻は五時十二分で、まだ早朝だったのか……と、揺蕩(たゆた)う頭に刻み込ませたけれど。 (具合悪い……)  昨日の朝から飲まず食わずでいたことを思い出すと、途端に喉がからからに乾いていることを自覚して(水飲みたい……)と思うけれど(なまり)のように身体が重い。  僕は再び床に寝そべってしまい、激しい悪寒に見舞われながら、冷たい床に預けた背中がますます痛くて心許(こころもと)なさを感じた。  ずりずりと床を這うように掛け布団を持ったまま、点けっぱなしだった電気ヒーターの前で身体を丸めるけれど、寒さに震えが止まらず、口からは絶えず咳が吐き出される。 (熱、何度あるんだろう……)  間違いなく熱があるのはわかるけれど、僕の家には風邪薬どころか体温計すらないので、自分の体感でしか察することが出来ない。 (とりあえず高熱なのは確かだ……)  もし――。  もしも、ここに将継(まさつぐ)さんがいてくれたなら、震える僕を優しく抱きしめてくれていたのだろうか。  夢の中の将継さんは僕を〝裏切り者〟だと言った。  悲しいけれど、そう思われても仕方がない行動を取るしかなかったのだから、悔やんだところでもうどうにもならない。 (……夢みたいに怒ってるはずだ)  そう考えたら、また瞳が滲みそうになるけれど、決心したのはあくまでも自分なのだから泣いている場合じゃない(一人で頑張るって決めたんだ)と、唇を噛み締める。 (武川さんが来るまでに起き上がれるようにならないと……)  今度こそスマートフォンを返してもらって、将継さんにひどい言葉を送られないように頑張らなきゃいけない。 (将継さん……僕、ちゃんと一人で生きていきます)
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