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二階建ての、八世帯くらい入れそうなアパート前に着いて、「二〇二号室だ」と相良に教えられた私は、相良が止めるのも無視して数段飛ばしで階段を駆け上がったのだけれど――。
ドアノブを回せば、当然と言うべきか。
鍵が掛かっていた――。
「深月!」
ガチャガチャとノブを回しながら扉をバンバン叩いていたら、追いついてきた相良に「長谷川、まだ早朝だ……」と嗜められた。
「けど! 鍵が掛かってんだよ!」
ここが深月の家だと言われても、私にはその実感がない。
もしかしたら第三者から閉じ込められている可能性だってあるんじゃないかと思って。
そもそも、こんなに外で騒ぎ立てているのに、深月が顔を出さないこと自体おかしいじゃないか。
(こうなったら……そこの窓を蹴破るか?)
キッチンと思しき面にある窓は、格子窓になっていた。
例え外から窓ガラスを割ったところで、鉄柵が邪魔をして侵入は不可能だろう。
だが、中の様子が見えれば何か変わるかも知れない。
キョロキョロと辺りを見回して消火器を見つけた私が、それを手に取ろうとしたら――。
「マジで待て! 長谷川!」
グイッと相良に腕を掴まれて、動きを封じられてしまう。
「放せ!」
グッと腕に力を込められて、苛立ちが募る。
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