46.謝るべきなのは私のほうだろ?【Side:長谷川 将継】

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 壁一枚隔てた向こう側に深月(みづき)がいるかも知れないのに、こんなところで悠長にしている暇はないんだ!と相良(さがら)を睨みつけたら、石矢(いしや)が「どうぞ」と目の前に鍵を差し出してきた。 「この部屋の鍵、下のポストに入ってたんだよ」  茫然と鍵を受け取った私を見て、相良が腕を解いてくれて吐息を落とす。 「鍵取って上がんぞ?って言おうとしたらお前、話も聞かずにどんどん行っちまうから……。逆に時間食っちまっただろーが」  苦笑まじりに言われて、私は「すまん」と謝罪した。  深月はいつも鍵を下の郵便ポストに忍ばせる癖があったらしい。  相良はそう言うのも調査済みだったと話してくれたのだが、考えてみたら結構怖い。  相良を敵に回すのだけは勘弁願いたいなと思ったりもしたのだが、正直(ぶっちゃけ)今はそんなことどうでもいい。  受け取った鍵を使って玄関ドアを開けた私は、部屋の中を一瞥(いちべつ)して――。 「深月!? おい、嘘だろ、深月っ!」  床に倒れた深月を見つけて、心臓が止まりそうになった。  深月の姿と、咲江(さきえ)が倒れた時とが重なって見えたからだ。  背後で相良が救急車を手配する声を聞くとはなしに聞きながら、腕の中へ抱きしめた深月が「(まさ)(つぐ)さ……、ごめ、なさ……」と涙を落とすのをただ茫然と見詰めて。  何で深月が私に謝るんだ?  謝るのは……来るのが遅くなっちまった私のほうだろ……?
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