47.許されるなら【Side:十六夜 深月】

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 好きだと言ったら、すぐに再び抱きしめられたと同時に唇を吸われたけれど、先程の情動的なキスとは違って、優しく(ついば)んで離れていった。 「……ん」 「はぁー、マジで安心した。深月(みづき)に『もう嫌いです』なんて言われたら立ち直れねぇーから。――私たち、ちゃんと恋人だよな? そう思ったんでいい?」 「……裏切ったのに、恋人で、いてくれる、んですか?」  怖々(こわごわ)と訊ねたら、将継(まさつぐ)さんは、心底安堵したように吐息を落として、それと同時、ゴホゴホと咳を吐き出したら優しく背を(さす)ってくれる。 「何を裏切ったんだ? 深月を手放す気なんてさらさらねぇよ。言っとくけどな……私は惚れた相手を簡単に逃せるほど心が広くねぇんだわ。深月が私を嫌いって言ったって、また好きにさせてみせる。絶対(ぜってぇ)放さねぇから。執念深いって呆れるか?」  フルフルと首を左右に振ったら、僕の口からも自然と「嫌いに……なれたら……、将継さんに、迷惑かけなくても、済むのに……好き……です。ごめんなさい……」と剥き出しの本音がこぼれる。 「なんで謝るんだよ?」 「こんな……個室に入れてもらったり……たくさん迷惑かけて、ごめんなさい……。本当は、来月までに、将継さんと離れなきゃ、いけないんです……。ちゃんと会って、もう会えないって言いたかった……けど、あんなメッセージで済ませようとして、ごめんなさい……」  言ったら、将継さんは床頭台(しょうとうだい)に置かれていた僕のスマートフォン(なんで将継さんが持ってるんだろう?)を手渡してくれた。 「あんなメッセージは取り消してくれるか? 来月までに離れろ? そんなん知ったこっちゃあねぇよ。――頼むから、離れないでくれ。深月がそばにいてくれねぇと、どうやら私は腑抜けちまうらしいってのがよーくわかった」  僕は、渡されたスマートフォンを操作して将継さんにメッセージを送ってみたら、それに気付いた彼は自分の携帯を取り出し画面を見つめて、すぐに口の端を(ほころ)ばせた。 『許されるなら、将継さんのそばにずっといたいです』  そう送ったメッセージを見て、将継さんは僕を抱きしめて「バーカ。口で言えよ。深月のことはが必ず守る。なんも心配しなくていいから、まずはしっかり身体治せ。込み入った話は後だ。深月との時間はこれからもたくさんあるんだから。――そうだろ?」と囁いた。 「……将継さん……ワガママ、言っていいですか?」 「うん?」 「風邪治ったら……、また、将継さんの家に、帰ってもいいですか……?」  琥珀色の瞳を覗き込んだら、「もう引き払っちまえよ、深月ん()。ずっと私のそばにいろ」と、ニッと笑って。  鼻の頭に落とされたキスに、つんと鼻の奥が痛んだ。
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