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48.離して堪るかよ【Side:長谷川 将継】
深月が入院しているここは、相良の所属している葛西組の息が掛かった病院だ。
相良の手配で入院した深月は、彼の計らいで特別室へ入院させてもらっている。
夕飯の配膳が終わって、トレイに乗っけられたものを見た私は、特別室の割にやたら質素なメニューだなと思ってしまった。
出汁の香りが食欲をそそる、くたくたに煮込まれた野菜たっぷりの煮込みうどんには、湯気の合間からちらりちらりと鶏ささみらしき肉の姿が垣間見える。
確かに沢山の食材がこれ一杯で一気に摂れそうだが、見た目からして地味なのは否めない。
加えて、デザートがバナナ半分だけとか――。
もっと美味そうなのがあるだろう!と思ってしまったのも仕方ないだろう。
だが、どうも話を聞いてみると、深月は昨夜からまともな食事をしていないらしい。
恐らく胃腸が弱っている深月に合わせて、消化に負担をかけないメニューになっているんだろう。
「なぁ深月。腹、痛かったりするわけじゃねぇよな?」
「あ、はい。そこまでは……。でも……ごめんなさい。あまり沢山は食べられそうにありません……」
それじゃなくても深月は細いのに、食欲がないと言われたら心配で堪らなくなる。
こんな少ない量の飯、お代わりしてくれてもいいぐらいだ。
左腕に相変わらず点滴の針が刺さりっぱなしの深月を見ていたら、どうにも落ち着かなくなって、私は恥ずかしがる深月を制して「あーん」で食べさせることにした。
「あ、あの……将継さんっ、やっぱりこれ……恥ずかしい……です。それに……凄く食べにくい、ので」
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