680人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
個室で、ベッドが広めなのをいいことに、私はちゃっかり靴まで脱いで深月のベッドへ上がり込んでいた。
そればかりか、当然の顔をして深月のすぐ真ん前を陣取ると、あぐらをかいてベッドテーブル上に乗っけられたうどんのどんぶりに手を伸ばす。
左手で器を抱えて、右手で箸を手にした私は、うどんを少量つまみ上げてはフーフーと吐息を掛けては冷まし、深月の愛らしい口元へと運ぶ。
深月は恥ずかしいだの、食べにくいだの、自分で食べられます、だの懸命に抗議をしながらも、目の前に食べ物が運ばれてくるたび、条件反射みたいに口を開けるのだ。
まるでひな鳥のようなその姿に、胸の奥がキュッと甘く疼く。
(やべぇな。スッゲェ可愛い……!)
一度、失いそうになったと思うから余計にだろうか。
深月の世話を焼きたくて堪らない。
「私が食わせなかったら深月、今食ってる量の半分も食えてなかっただろ?」
私の言葉にしゅんと項垂れる深月が愛しくて、クスクス笑いながら「お茶いるか?」と問えば、「はい」と答えて、深月が恥ずかしそうに眉根を寄せる。
「熱いのだとこぼして火傷するかも知れねぇからな」
言って、冷蔵庫に常備されていた冷えた茶のペットボトルを取り出してキャップを緩めて渡してやれば、深月が困惑したように私を見詰めてくる。
「あの、将継さん。僕……ペットボトルのふたくらい自分で開けられます」
――ああ、そんなことは百も承知だ!
最初のコメントを投稿しよう!