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だが、あれもこれもしてやりたくて堪らないんだから、仕方がないじゃないか。
「深月は……私に世話を焼かれるのがイヤか?」
あえて悲しそうに見えるよう眉根を寄せてトーンダウンしてみせれば、深月が慌てたように「い、嫌じゃ、ない、ですっ! その……ちょっと……恥ずかしかっただけで……!」とフォローしてくれる。
深月は優しくて可愛くて……そしてチョロい。
私は心の中で一人ほくそ笑むと、「じゃあ、食事の続きをしようか」と、今度は柔らかく煮込まれた鶏肉をすくい上げた。
「はい、深月、あーん?」
十分冷まして深月の口元に箸をやれば、深月が真っ赤になって口を開けてくれる。
(本当、可愛いな)
そう思ってニヤニヤしていたら――。
「ラブシーンの最中悪いんだが、ちぃーと邪魔させてもらうぞ?」
スライドドアが薄く開いたのちに、コンコンとわざとらしくノック音が響いた。
見れば、半分ばかり開けられた引き戸の隙間から、相良がヒョコッと顔を覗かせていた。
「相良、お前なぁ、ノックは戸ぉ開ける前にしろよ」
「えー? 今のって俺が悪いわけ? 病室でイチャついてる方が問題ありだと思うんだがなぁ?」
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