680人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
そんな深月に、『怖がらなくても大丈夫だ』という風にうなずいてみせたからだろう。
深月が、恐る恐るではあったけれど、相良の手に向けてほっそりとした手を伸ばした。
だが――。
深月の手が、相良の指先に触れるか触れないかのところで、私は「はい、そこまでな?」とわざとらしく割り込んで阻止せずにはいられなくて。
途端、相良がブハッと吹き出した。
そうしてすぐさま至極真剣な顔で私と深月とを見比べると、
「その反応。――お前から咲江ちゃんを紹介された時以来だな」
言って、どこか寂し気に微笑んだ。
「なぁ長谷川よ。今度こそ離さねぇで済むようしっかり深月ちゃんの手ぇ握っとけ。くだらんヤツらに大事なモンを奪わせるような真似したら承知しねぇからな?」
咲江の時のように、病気とかならどうしようもないとして、人為的なものならば死ぬ気で振り払えと、相良から鋭い眼光で射抜かれた。
「そのために俺の助けが必要ってんならいくらでも貸してやるから遠慮だけはすんな」
相良の声に、私は深月の手をギュッと握りしめる。
「バーカ。当たり前だろ? 絶対に離して堪るかよ」
最初のコメントを投稿しよう!