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49.ただいま【Side:十六夜 深月】
「深月、さっき話した協力者ってのがコイツのことだ。相良はちぃーとヤンチャだが頼りになるヤツでな。今日、深月を助けられたのもコイツのお陰なんだわ」
ギュッと握られた将継さんの手を条件反射で握り返したら、相良さんはそれを見てククッと笑って僕の瞳を覗き込んできた。
「長谷川みたいなんに捕まったんじゃあ深月ちゃんも大変だな? コイツ、深月ちゃんがいなくなったら手に負えないバカになっちまうから、俺の大事な幼なじみのためにそばにいてやって?」
「……は、はい。助けてくださって、ありがとう、ございました。また……将継さんに、会わせてくれて……ありがとうございます」
それを聞いた将継さんは僕の手を放さないまま、「誰がバカだ」と反論すると、相良さんは一つ吐息を落として「事実だろうが」と喉を鳴らした。
(バカになった将継さんってどんなだろう?)
友人の前だからだろうか、いつも冷静で大人な将継さんが見せる稚い表情に、相良さんがいるにも関わらずクスクス笑ってしまう。
と――。
途端、相良さんは揶揄するような瞳から一変、冷徹な視線を将継さんに向けて「――で、長谷川。どうなんだ?」と静かに何かを窺った。
「ああ……。取り敢えず来月っちゅー猶予があるみてぇーなんだが……深月を困らせてるのは事実らしい。ただ、今は深月の回復を優先したい。話はその後に聞く」
「了解。動く時は連絡くれや」
(将継さんと相良さん何の話だろう……)
何だか二人が僕のために危ないことをしようとしているんじゃ……と眉根を寄せると、相良さんはまた優しい視線を僕に流した。
「じゃ、別嬪さんに自己紹介も出来たし、二人の甘ーい時間も邪魔しちゃ悪いから俺はこれで退散するわ。深月ちゃん、ゆっくりしてってな?」
「あ、あの……本当に、ありがとうござい、ました」
言ったら、相良さんは片手を上げて颯爽と去っていったので、思わず「相良さんって……素敵な人、ですね?」と将継さんを見つめたら、彼は少しだけ唇を尖らせた。
「私よりも?」
(今日の将継さん何だか可愛い……)
「ま、将継さんが……一番素敵で、す……」
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