50.今だけ許して、神様【Side:十六夜 深月】

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50.今だけ許して、神様【Side:十六夜 深月】

***   「長谷川(はせがわ)社長、いらっしゃい。久しぶりだねぇ」  退院祝いだと、将継(まさつぐ)さんとタクシーで辿り着いたのは、僕たちが初めて出会った居酒屋で、暖簾(のれん)をくぐるなり店主がすぐに将継さんに声を掛けた。 「親父(おや)っさん、久しぶり。なかなか顔を出せなくて悪かったね。ちょっと色々あって、外食に出る時間が無くて」  と――。  将継さんの後ろにぴたりとくっついている僕に気付いた店主が、おや?と目を(またた)かせて「あれ? キミは確か……」と声を掛けてきた。 「こ、こんばんは。あ、あの、先日は店内で倒れて……ご迷惑、お掛けしました……」  ぺこりと頭を下げると、店主は「どうして長谷川社長と彼が?」と将継さんの顔を窺った。 「ああ……。あれから訳あって、彼と……深月(みづき)と一緒に暮らすことになってね。深月が今日まで入院してて、退院祝いに出会った店で飲もうって話になって」  コートをハンガーに掛けながら将継さんがそう説明すると、店主は特に邪推する様子もなく、「深月くんって言うんだね? 退院おめでとう。そういうことならサービスさせてもらうよ」と屈託なく微笑んでくれた。 「あ、ありがとう、ございます……」  あの時の僕は現実逃避的に入った店で、ましてビールだけで朦朧としていたからよく店内を把握していなかったけど、カウンター席が五つと、四人掛けのテーブル席が三つあって。  将継さんは「深月とゆっくり話したいからテーブル席に通してもらっていいかな?」と店主に告げると、快く了承してくれて、三人のバイトの女の子の一人が少しだけ陰になったテーブル席に僕たちを案内してくれた。 「長谷川社長は日本酒の辛口ですよね? キミは?」 「あ、あの……僕は、ビールで……」  しどろもどろに伝えると彼女は「かしこまりましたー」と嬉々として厨房に戻っていき、将継さんと二人きりになると、彼はどこか感慨深そうに僕を見つめてきた。 「ここに深月が来なかったら、私たち出会えてなかったんだよな。また一緒に来れるなんて夢みてぇだ」 「ま、将継さんは、どうして僕を助けてくれたんですか?」 「んー、そんなん……一目惚れっちゅーやつ? あわよくば深月とお近付きになれねぇかな、と思って?」  ククッと笑う将継さんに僕は耳まで真っ赤にしつつも、「僕も、将継さんを初めて見た、時……素敵な人だなって思いました……」と告げると、彼はテーブルの上の僕の手をギュッと握りしめてきたので、そっと握り返したら「あんまおだてんな。愛してるって言いたくなっちまう」なんて言い始めるから。 「……もう言ってるじゃ、ないですか」 ----------- すみません。 ただいま将継(まさつぐ)Side担当の鷹槻(たかつき)羽那(うな)https://estar.jp/comments/65917476 ……の事情(コンテスト応募作の締め切り間近)で多忙なため、深月(みづき)ターンがもう一度、そしてしばらく(4/23まで)続きます。 将継ターンを楽しみにして下さっている皆様には申し訳ありませんが、しばらく深月ターンにお付き合い頂けましたら幸いです💦 鷹槻羽那×ちろる -----------
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