50.今だけ許して、神様【Side:十六夜 深月】

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 密着した唇はもう(ほど)けないんじゃないだろうかという程に固着して、将継(まさつぐ)さんの僕よりも長く肉厚の舌が翻弄(ほんろう)するように口腔の奥深くを探るから、胸が詰まって、彼の背をトントンと叩く。  けれど、将継さんは僕の舌を放してはくれなくて、まるで視線で(まさぐ)るような、何もかも見られ、晒されているかのようなキスを続けるから、心が裸にされてしまったような心許(こころもと)なさを感じる。 「ふっ……う……まは、ふ……」  更に抵抗するように、今度は胸を押しやったら、一瞬唇が離れた合間に「深月(みづき)ん中、全部掌握したい」と、吐息を唇に吹きかけてくるから。 「も……将継さ……の、もの――」  言い終わる前にまた唇を塞がれ、舌に飽きたように、頬の粘膜を、歯列を、歯肉を、上顎を縦横無尽に将継さんの優しいかたまりが這い回って、ぴりりと日本酒の辛味がする舌は僕まで酔わせたのだろうか。  こめかみがツキツキと疼き、身体が浮遊する。  言葉が紡げないのを了承と捉えられたのか、将継さんは唇への愛撫をやめないまま、僕のカットソーの裾からひやりと冷たい手のひらを這わせてきた。  腰を撫でる手つきはどこまでも妖しく、快楽の火種を焚きつけるように、ススッと指先が小さな胸の突起に触れてびくんと身体が跳ねる。  やっと口接を解いた将継さんは、僕の首筋をぺろりと舐め上げ「ちぃーとしょっぱいな」なんて呟くから、僕は身の置き所がなくなって「お風呂……入りたい……」とこぼしたら、「深月の匂いのまんまがいい」と、首筋を吸い上げて(あか)い花が咲く。 「……ん、恥ずかしい……です」 「捨てちまえよ。羞恥なんて。気持ちよさでなんも考えらんなくしてやっから。深月はただに感じてりゃーいい」
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