50.今だけ許して、神様【Side:十六夜 深月】

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 それから各々お風呂に入って寝支度を整えると、将継(まさつぐ)さんは、「深月(みづき)」と僕を手招きした。 「……はい?」 「今日からさ、私たちが同棲して初めての夜だ。私の部屋で一緒に寝ねぇか?」  その言葉に僕の頬はたちまち赤らんで、でも将継さんと抱き合えるのが嬉しくて「はいっ! 僕、布団、持ってきます!」と自分の部屋へそそくさと入り、将継さんの布団の横に持ってきた布団をぴたりとくっ付けた。 「おいで? 深月」  今日はもう何もしないとわかりつつも、緊張しながら将継さんの隣の布団に入り込むとすぐに抱きしめられて、将継さんはリモコンでシーリングライトを消した。 「あの……将継さん。……約束、して欲しいことがあります」 「約束?」   暗闇の中、将継さんの体温だけを感じながら、僕は不安で仕方がないことを恐る恐る切り出した。 「僕は……将継さんのことが……その、好き、です」  好きだと言っただけで、じわっと胸が温かくなって、何だか涙腺が緩みそうになるけれど、ぐっと唇を噛み締めて続ける。 「好きだから……絶対に、僕のために、危ないことはしないで、ください。将継さんがいなくなったら、僕……耐えられない……です……」  言ったら、将継さんは僕の頭を抱き寄せて「バーカ」と、暗闇の中、頬にキスを落としてきた。 「私は深月を残してどこかに行く気なんてさらさらねぇよ。私たち、今は恋人だけどさ、もう少し深月が私に慣れてくれたら……そうだなぁ、たとえばその敬語が取れるようになったら、夫婦になれねぇかな?」 「ふ、夫婦……ですかっ!?」 「私は深月と添い遂げたいと思ってる。絶対(ぜってぇ)離さねぇ。だから、ずっとそばにいてくれ。深月を不安にさせないように必ず守るから。――あ、でも……深月の全部もらうのはまだ不安か?」  なんて、ククッと笑うから、「将継さんの意地悪。……おやすみの、キスして?」と夜目に慣れた瞳で見つめたら、すぐに唇を塞がれる。  優しい舌で唇を舐められて、幸福のかたまりみたいな熱が口腔に潜り込めば、たちまち甘い痺れに脳内が(おか)されて、将継さん以外のことは何も考えられなくなる。  そんな、キスの罠に絡め取られてやまない僕は、将継さんに囚われて、繋がれて、どこにもいけないくらい一つになっているんだって思ったら、閉じたまぶたから雫が伝った。
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