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51.違和感と失踪【Side:長谷川 将継】
「なぁ深月、ひとつ確認なんだが……深月のおふくろさんはまだ例の親父さんと一緒に住んでるのか?」
口付けを解くなり、じっとこちらを見上げてくる深月に、私は問い掛けずにはいられない。
「……はい」
息子のことを涙ながらに頼んできた母親に、深月の手前『必ず幸せにします』と請け負ったものの、どうしてもモヤモヤが拭えなかった私は、深月の返答を聞くなり思わず眉根を寄せてしまった。
「あ、あの……将継さん……。それが何か……」
「あ、いや、……もしそうだったら深月、おふくろさんと自由に会えなくてしんどいんじゃねぇかなって思っちまっただけだ」
そんな私の様子に、深月が不安気に瞳を曇らせるから。
私は深月を腕の中に抱き寄せたまま、先ほど深月が母親にしていたようにゆるゆると背中をさすってやる。
深月と母親の関係は、少なくとも表面上はそれほど悪くないように見えた。
深月を旦那の魔の手から救い出せなかったことを思いっきり後悔しているようにアピールしまくっていた(と私は感じた)母親のことを、深月は〝仕方のないことだった〟と許しているみたいで。
そこが深月の優しさだと言えばそれまでなんだろうが、私はどうしてもそんな母親の態度が腑に落ちなかったのだ。
本当に深月に悪いと思っているならば……。真実後悔していると言うならば……。自分の選んだ男が我が子に酷いことをしていると知った時点で、離婚しているものなんじゃないのか?
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