53.十六夜 華月という女【Side:長谷川 将継】

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*** 「母さん、今日はわざわざ僕と将継(まさつぐ)さんの家を見に来てくれて有難う」  母親が訪問するなり、深月(みづき)が嬉しそうに彼女を出迎えた。  華月(かづき)は、深月がいることに驚いた顔で私を見て。 「長谷川(はせがわ)さん、今日は……」 「大丈夫です。深月がお母さんに自分が住んでるトコを見せて安心させたいって言うから今日はうちに来て頂きましたが、一通り家をお見せしたら……」 「僕、ちゃんと二人のお話の邪魔にならないよう、別室に行くから……」 「でも……」 「こう見えてうちは結構広いんです。あと、手前勝手なことを申し上げますと、うちの会社が技術を尽くして建てた家です。気密性も割と高いんで、離れた部屋の物音は早々漏れ聞こえないはずです」  深月がいることに難色を示す母親を何とかそう言って言いくるめると、そのやり取りを不安に感じたんだろう。 「あ、あの僕っ、お茶……! お茶を淹れてきます!」  と深月がソワソワし始めるから。  そんな深月を押しとどめ乍ら、私は「それは私がやるから。深月はお母さんに家ん中、案内してあげて?」と提案した。  深月が母親と別室へ行くのを見届けてから、私はキッチンに移動してヤカンを火に掛けながら、相良に『三分後』とメッセージを送った。  三分したら相良に来てもらって、タイミングを見て深月を外へ連れ出してもらう。  その間に、私は十六夜華月(あの女)から秘密の話とやらを聞き出そう。  そう思った。
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