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02.出会い【Side:長谷川 将継】
「長谷川社長、いらっしゃい。――今日も冷えるねー」
「ああ、そうだね」
三月の初旬。
日中日差しが射せばそれなりに暖かさを感じられるようになってはきたけれど、風は鋭さを持って吹きつけてくるし、陽が落ちればまだまだ冷える。
暖房の効いた店内のほっこりとした暖気に包まれて、私は作業服の上に羽織っていたコートを脱いだ。
そうして、そのまま慣れた手付きで備え付けのハンガーを手に取って上着を掛けると、店の入り口横に設置された壁掛けハンガーフックへ預ける。
カウンター席が五つと、四人掛けのテーブル席が三つ。
小じんまりとしたこの居酒屋は、店主と奥さん、そしてバイトの女の子三人で切り盛りしていた。
「親父さん、今日のおすすめは?」
「サヨリの新鮮なのが入ってるから刺身は是非食べてもらいたいね。あとは……そうだなぁ。カブのそぼろ煮なんか、身体が温まっておすすめだよ。――近くの農家から、いいカブが入ったんだ」
作業の手を止めないままにそんな説明をしてくれる店主に、
「じゃあ、それをもらおうかな。あとはとりあえず――」
注文を続けようとしたら
「辛口の日本酒でしょう?」
先に言われてしまった。
常連ともなると十言わなくてもある程度通じてしまうところが有難い。
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