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今日、深月さんのアパートには俺がこの世で二番目に大事にしている人を陥れようとしている最低ヤローを呼び出してあったから。
ヤツをおびき寄せる餌にした深月さんを、実際にそこへ近付けるわけにはいかないのだ。
カシラや長谷川さんは間違いなくカウンセラーの男を追い詰めるべく算段をしていた。そんな現状で、正直俺が勝手に動くことを二人とも快くは思わないだろう。
以前久留米からいいように手先にされていた武川とか言うバカをシメた日、俺が運転する車の後部シートでカシラと長谷川さんが現状を話しているのを聞いた。
あん時、俺はカシラから『自分が何でここへ連れてこられたか、分かったよな?』と念押しするみたいに確認されたのだ。
あれはきっと、久留米のヤローが長谷川さんを深月さんへの傷害で陥れるような真似をしようとしやがったら、お前が名乗り出て長谷川さんの身の潔白を晴らす捨て駒になれと言う意味だったんだろう。
きっとカシラなら、久留米が二人を脅す切り札を潰しただけで良しとしないことは、下っ端の俺にだって分かっていた。
絶対に何らかの形でヤツにも〝落とし前〟を付けさせるはずだ。
それは、俺自身が嫌というほど身をもって体験させられたことだったから分かる。
分かるが――。
待てど暮らせどなかなか久留米の断罪になりそうにない状況に、生来せっかちな俺はマテが出来なくなったのだ。
モタモタしている間にも、久留米は長谷川さんを害してやろうと動き始めているかも知れない。
そう思ったら、どうせ捨て駒になる身。まどろっこしいことなんて全部すっ飛ばして、俺が久留米を殺っちまえば手っ取り早いんじゃね?と思うようになっていた。
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