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部屋に人が近付いてきた気配に、てっきり久留米が罠に掛かったと思って待機していた俺は、害してやろうと一歩を踏み出した所で相手が深月さんだと知って心底驚いたのだ。
まぁ俺よりも深月さんの方が衝撃がデカかったみたいだけど。
(久留米と鉢合わせにならなくてホント良かった)
深月さんは、当たり前だが俺を見て酷く怯えた顔をして飛び出して行っちまったが、それより何より彼が明らかに目を泣き腫らしていたのが気になった。
あんな状態の深月さんを無視して当初の計画通り久留米を待ち伏せ出来るほど、俺はカシラや長谷川さんへの忠義を忘れたわけじゃない。
すぐさま部屋ん中で電源を切ったまま放置していたスマホを手に取ると、電源をオンにしてカシラに連絡を取った。
当然と言うべきか。
電話が繋がると同時、開口一番『石矢、テメェ、一体どこに……』と怒声を飛ばしてきたカシラの声を途中で遮った俺は、手短に用件のみを伝えた。
「カシラ! 俺、何か様子のおかしい深月さんと鉢合わせになりました! このまま後を追い掛けるんで、カシラは俺の携帯のGPSを拾って追跡してきてください。話は無事会えた時にいくらでも聞きますんで! じゃあ!」
『あ、おい! 石矢!』
カシラが何か言い募ろうとしてきたけれど、俺はそれを無視して通話を切ると、深月さんの後を追ったのだ。
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