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将継さんと夕飯を済ませて、彼はお風呂に行ってしまったので、僕はリビングでぼんやりしていると、急に僕のスマートフォンが着信を告げて卓上で踊った。
ディスプレイを見たら非通知だ。
(非通知って出ない方がいいよね? でも僕に電話を掛けてくるなんて奇特な人はいないから何か用があるのかも……?)
訝しみながら「もしもし?」と電話に出ると、『深月くん?』と先生の声が聴こえて、思わず「ひっ!」とスマートフォンを落としそうになる。
「せ、先生……どうしたんですか?」
『石矢くんは深月くんのお友達かな? 先生どうやら騙されたみたいなんだけど……。どういうことかな? ――来月、なんて猶予を与えるのは間違っていたのかもしれないね。もう長谷川さんの家に引っ越しまでしているなんて。離れなさいって先生は言わなかったかな? 深月くんがそのつもりなら、先生も少し急がせてもらうね? とりあえずプレゼントを用意したからポストの中を見てくれる? じゃあ、おやすみ』
それだけ告げられて切れてしまった電話を耳に当てたまま、僕は放心状態になってしまったけれど、玄関を出てポストを開けると何か茶封筒が入っていた。
中からは血痕が付着した母さんのマイナンバーカード。
母さんが先生の元に?
それから――。
写真は撮られていないはずだったのに、監視カメラの映像から切り取ったのだろうか?
荒い画像だけれど、僕が腹部をまくって石矢さんに殴られた痕を晒している写真。
更には先程、将継さんと一緒に家に帰ってきている写真まで同封されていた。
(母さんが拉致……? 傷痕の写真も握られている……? 将継さんと僕のそばにいた……?)
途端、背筋に冷や汗が滴った僕はすぐに家の中に逃げ込み、玄関をしっかり施錠する。
僕は丁度お風呂から出てきた将継さんに「将継さん! 先生が!」と縋りついていた――。
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