57.最優先事項【Side:長谷川 将継】

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***  相良(さがら)の説明によると深月のアパートは、刃物で手当たり次第に切りつけられて、見るも無残な有様になっていたらしい。  オマケに――。 【ミヅキクン、センセイをだましたコト、コウカイさせてあげるね?】  壁に、血文字でそう綴られていたらしい。 『恐らくは久留米(くるめ)本人の血だとは思う。一応調べさせたんだが、葛西組(うちのくみ)で裏をとってる、ヤツの血液型――A型――と一致してたからな』  そこで何故か相良が、『ちなみにあのクソ女……深月ちゃんの母親の血液型はO型だ』と付け加えてくるから、私は「何でいま華月(あの女)の話?」と前置きしながら、「それにしても……普通じゃないだろ?」と返したのだ。 『ああ、あと……もうひとつ……その華月(かづき)だがな……』  そこで、電話の向こうでカチンと金属音が聴こえて、はぁーと大きく息を吐き出す気配がする。  恐らく相良が愛用のジッポライターで煙草に火をつけて吸ったのだろう。 『今日、深月ちゃんの母親、うちの組の(もん)に家まで連行させただろ?』 「ああ」  まさかこのクソ忙しい時に、十六夜華月(あのオンナ)まで何かしでかしたんだろうか?  そう思って声に険を含ませたら、『消えたんだよ』と相良がつぶやいて。私は「は?」と間の抜けた声を上げずにはいられなかった。
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