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相良の説明によると深月のアパートは、刃物で手当たり次第に切りつけられて、見るも無残な有様になっていたらしい。
オマケに――。
【ミヅキクン、センセイをだましたコト、コウカイさせてあげるね?】
壁に、血文字でそう綴られていたらしい。
『恐らくは久留米本人の血だとは思う。一応調べさせたんだが、葛西組で裏をとってる、ヤツの血液型――A型――と一致してたからな』
そこで何故か相良が、『ちなみにあのクソ女……深月ちゃんの母親の血液型はO型だ』と付け加えてくるから、私は「何でいま華月の話?」と前置きしながら、「それにしても……普通じゃないだろ?」と返したのだ。
『ああ、あと……もうひとつ……その華月だがな……』
そこで、電話の向こうでカチンと金属音が聴こえて、はぁーと大きく息を吐き出す気配がする。
恐らく相良が愛用のジッポライターで煙草に火をつけて吸ったのだろう。
『今日、深月ちゃんの母親、うちの組の者に家まで連行させただろ?』
「ああ」
まさかこのクソ忙しい時に、十六夜華月まで何かしでかしたんだろうか?
そう思って声に険を含ませたら、『消えたんだよ』と相良がつぶやいて。私は「は?」と間の抜けた声を上げずにはいられなかった。
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