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相良の話によれば、深月の捜索に人員を割かれたため、華月を送り届けた者たちには石矢から連絡を受けてすぐ、この家までとんぼ返りをさせたらしい。
『お前ん家に誰もいないとか……もし行き違いで深月ちゃんが帰って来たら困るし……それに――』
我が家の住所は久留米にも割れている。
もし誰もいない間に家へ細工でもされたら事だと思ったんだとか。
『あの女は見張っていなくても……最悪お前ん家やお前らにどうこうしようとしなけりゃ放置しといても問題ねぇだろ?』
そのとき私は相良と一緒にいたし、深月は石矢がガードしていた。
確かに華月を見張る理由はなかったのだ。
***
「石矢、お前ホント余計なことをしてくれたな……」
相良との電話を切って浴室を出た私は、冷え切った身体をタオルで拭いながら思わずそうつぶやかずにはいられなかった。
石矢が、私や相良のことを思って動いたと言うのは十分理解できるつもりだ。
だが――。
そのせいで元々危うかった久留米の野郎を焚きつけてしまったらしい。
いなくなったという華月が、どうやら無理矢理連れ去られてしまったことは明白で。
さっき帰宅してきたあの女の夫――つまりは深月の義父が家の中に血痕が残されていて妻の姿がないとかで警察に通報したらしい。
相良は警察の方にも伝手があるとかで、そんな情報が入ってきたのだと教えてくれた。
別に私自身はあの女がどうなろうと知ったことじゃないし、逆に因果応報だと思わないこともない。
だけど、深月はどうだろう?
そう思いながら、このことを深月に話すべきか否かを迷いながら脱衣所の扉を開けたら――。
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