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「将継さん! 先生が!」
深月が血相を変えて私に縋りついてきた。
ギュッと私の服を握る深月の手が小さく震えているのが分かって……。
私は「何があった?」と努めて冷静に聞こえるよう穏やかな声音で深月に先を促した。
深月は相当パニくっているんだろう。「僕の怪我の写真がっ」とか「将継さんと一緒にいるところも見られててっ」とか「母さんの血がっ」とか……取っ散らかった説明をする。
ふと見れば、私の服を掴んだ深月の手には封筒と、そこから出したと思われる紙片が数枚ギュッと握られたままだった。
「な、深月。手にしてるそれ、私にも見せてくれるか?」
私は深月の頭をふんわり撫でながら、深月の涙に潤んだ黒瞳をじっと見つめる。
深月の震える手を包み込むように両手でそっと握ってから、血の気が引くくらいギュッと握られたままの紙片を、彼の指を一本一本優しく開いて引き剥がした。
そうしてそれらにサッと目を通して……深月が私に何を伝えようとして……何に慌てふためいていたのかを知る。
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