57.最優先事項【Side:長谷川 将継】

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「――なぁ深月(みづき)。深月が今パニくってる一番の要因は何? 傷の写真? 私と一緒にいる所を撮影されたこと?」  そこまで問いかけてから……わざと間を置くようにして一呼吸開けると「――それとも……おふくろさんのこと?」と血に汚れた十六夜(いざよい)華月(かづき)のマイナンバーカードを深月の前へ差し出した。  深月は瞳を見開いて私の手元を見詰めてから……「僕は……母さんを助けたい……です。色々酷いことをされた、けど……それでも……僕は母さんを見捨てられません……。ごめんなさい」と涙をこぼす。  私はそんな深月をギュッと抱き締めると、 「バカだな、深月。何を謝ることがあるんだ。深月がおふくろさんを助けたいってんなら、私はいくらでも協力する。深月が守りたいものを守るのが私の喜びだからな?」  そう告げて深月を安心させるみたいに二ッと笑って見せると、相良へ電話をかけた。 「――ああ、相良か? さっきの話だがな。深月のおふくろさんを助けるのが最優先事項だ。他は二の次でいい」  私のその言葉に、腕の中の深月が「将継(まさつぐ)さん……有難う、ござい、ます」と声を震わせた。
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