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真夜中、将継さんがスマートフォンを持って寝室から出ていく気配に瞳を開けると、僕はリビングに行った彼を追って、襖から聞き耳を立てた。
「――じゃあ、久留米は痕跡も残さず失踪した後だったけど、華月は無事路上で軽傷で見つかって、聞けることだけ聞いて警察に引き渡したんだな? 病院は? ……ああ、深月が入院したあそこか。了解」
(母さん、無事だったんだ……よかった)
「しっかし、相良でも掴まえ損ねたっちゅーことは、今回は相当綿密に動いたんだろうな……。あんなとち狂った状態だ。また何をしてくるかわからない。深月は私が必ずそばで守る。――とりあえず華月のことは助かった。深月が起きたら無事だと伝えるよ」
そこまで聞いて僕は慌てて布団に戻ってまぶたを閉じると、将継さんが戻ってきて再び僕を抱きしめた。
(明日は日曜だけど、面会は出来ないかな……?)
将継さんが眼鏡を枕元に置いてしっかり入眠するのを待つと、僕はそっと腕から抜け出して自分のスマートフォンを取り出し、僕が入院していた病院のホームページを開いた。
(朝九時から面会可能か……)
***
翌朝、将継さんが作ってくれた朝食を一緒に食べながら、僕は(さて、お見舞いのこと、どう切り出そう……電話盗み聞きしたって言ったら怒るかな……)と頭を悩ませていると、幸運にも将継さんが母さんの話題を振ってくれた。
「深月、昨日の夜中に相良から電話があってな。おふくろさん、無事に見つかって怪我も大したことないようで、深月が入院してた病院に運ばれたそうだ。少しは安心したか?」
「ほ、本当ですか? あの、じゃあ僕、母さんのお見舞いに行きたいです!」
「んー。でもなぁ。もしかしたらクソ義父と鉢合わせる可能性もあるだろ? 危ないから、おふくろさんが退院してから会うんでいいんじゃないか?」
「義父さんと……。そう、ですよね。お見舞いに行くのは駄目……ですよね。……わかりました」
(でも母さんの怪我、どのくらいなのか気になる……。最悪、義父さんを見つけたら逃げたらいいし、やっぱ行きたい……)
将継さんに内緒でお見舞いに行くには――。
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