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朝食を終えて将継さんと二人、水入らずで日曜の朝を過ごしていると、丁度洗濯機が終了のブザーを鳴らした。
「お、洗濯終わったみたいだな。天気がいいから庭に干そうか。深月も手伝ってくれる?」
「は、はい! 僕、洗濯物持ってくるので将継さん待っててください!」
「サンキューな」
僕は急いで洗濯機がある脱衣所に行くと、中から濡れた洗濯物を取り出し、あえて一組の靴下を片方だけ洗濯機の中に置いたままリビングに戻った。
将継さんがよしよしと頭を撫でてくれて、一緒に広縁から庭に出ると、二人で次々に洗濯物を物干し竿に干していく。
そこで僕は――。
「あっ! ま、将継さん! 靴下を片方……洗濯機の中に忘れてきちゃった、みたいです。すみません、取ってきますね?」
将継さんがクスクス笑いながら「深月はそそっかしいな。だから私がいないと心配になるんだ」と微笑んでくれるから、照れ笑いを返しつつ僕は脱衣所――ではなくて玄関へ向かった。
(将継さん、ごめんなさいっ! すぐ帰ってきます!)
と、スニーカーの紐を結んでいると――。
「深月」
背後から将継さんの気持ち鋭い声が聴こえて、僕は自分の浅はかさにうぐっと喉が詰まって恐る恐る後ろを振り返る。
「どこへ行くんだ?」
そう問うてきた将継さんに、僕はしゅんと項垂れて「……ごめんなさい」と消え入りそうな声を出す。
すると将継さんは「深月に説教だな」と言いながら、僕の腕を引いて家の中へ戻るよう促してきた。
(あの将継さんが怒ってる……いや、怒るに決まってる……僕の馬鹿!)
腕を引かれている間、将継さんは何も喋らなかった。
(どうしよう……もう嫌いって言われたら……)
自業自得なのに、僕は将継さんに嫌われたかもしれないという現実に涙が出そうになってしまった。
将継さんの腕は力強い。
けれど、どこか温かさを感じたから、僕は素直に将継さんに謝罪しようと腹を括った。
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