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「これを聴いてもなお、深月クンはあなた方と一緒にいたほうが幸せだと主張なさいますか?」
どうせ深月が目を覚ませばすべてのことは露呈すると分かっていながら。
相良はあえて警官や警備員の前でその音声を披露したのだ。
「そ、それはっ。そっ、そんなものを勝手に録音しているとか! は、犯罪じゃないのか!」
クソヤローが何やら吠えているけれど、相良は涼しい顔をしてスッと目を眇めた。
「ああ、さっきアンタが言った通り俺は堅気の人間じゃねぇからなぁ? そんなヤクザ相手にそれ、無駄だと思わねぇ?」
先ほどクソヤローが言ったことを逆手に取ってククッと喉を鳴らした相良の目は、笑っていなかった。
「俺はさ、アンタら一般人様と違って、いつトラブルに巻き込まれても対処出来るよう、金もコネもたんまり持ってんだわ。ってわけで――アンタら夫婦のやった事、きっちり落とし前つけさせてもらうから、そのつもりで居てくれや」
言って、相良は警備員や警察官に向き直ると、「わざわざ呼び出して悪かったな」と今度こそニヤリと微笑って見せる。
どうやら彼らをロビーに集めたのは、相良の仕業だったらしい。
通りで警備員や警察の姿が見えても、落ち着いていたわけだと思い至りつつ、私は『そういうことはこっちにも事前に言っておいてくれよ』と心の中で小さく吐息を落とした。
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